時には渋く、悲しく、そして冷徹に演ずる蟹江敬三さんの小房の粂八は、ある意味鬼平の裏の主人公と言ってもいいと僕は思っている。残念ながら蟹江敬三さんは死去され、長谷川平蔵は小房の粂八をさらに愛おしくなっていることだろう。
粂八は「野槌の弥平の知恵袋」とも言われた盗賊である。血頭の丹兵衛で初登場し、かってのお頭・血頭の丹兵衛の名を汚すニセ物を見つけるために、罪人のまま密偵となります。
この事件をキッカケにして平蔵の人柄に惚れ込んだ粂八は、前に森為の介がやっていた深川・石島町の船宿「鶴や」の主人として、本格的に密偵となります。
彼は、両親の顔を知らず、幼いころの記憶は「おん婆」に手を引かれて、雪の中を歩いていたことのみ。そのシーンも劇中で放映されます。その後は、大坂の山鴉銀太夫一座で綱渡りをしていたことがあります。
身寄りのない粂八にも、かつて女がいました。馴馬の三蔵によれば鮫洲の市兵衛の女・お紋と深い仲になり、駆け落ちしたことがあるとか。その後、お紋が殺されて2ヶ月後に、平蔵に捕まった。